Jazz Bass Blog

Exploring The World of Jazz and Low Note

真剣の先にあるもの

ジャズを聞く人間の種類は大きく分けて、二種類いる。一人は真剣な顔つきで、演奏者を観察しながら、音の使い方を分析している人だ。もう一種類の人間は、体を小刻みに揺らしながら、音を体で感じる人だ。

まずジャズの聞き方に正解というのはない。バーで酔っ払いながら聞く人もいれば、ちょっとお洒落なレストランで会話をしながら、BGMとして聞く、という聴き方だってある。だから、これが最もだ、といった正しさはそこに存在しないし、するべきではない。しかし、”音楽”には絶対的な本質というものがある。それは音楽を通していかに演奏者が表現できるかである。なぜなら音楽は、一種の芸術として、人が何らのモノを通して利用することが出来る表現方法の一つだからだ。そうであるから、自分が一番表現したい内容が表現できる限りは、簡素な話、楽器はどれだっていいのかもしれない。又同様に、数ある現代楽器が、普及して確立されつつあるのは、西洋の文化や伝統の継承以外に、人間の表現したい内容を上手く投影する事ができるから、とも考えられる。

 

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私はセッションに毎週通い、普段の生活から多くの時間を練習に捧げてきた。極度に集中をして取り組んでいると、それに対して真剣に向き合うようになる。次第に私は、セッションやライブに顔を出しても、ジャズを楽しむ人間ではなく、観察/分析者になっていた。

 

足でノリを取らず、じっくりと真剣な眼差しで演奏者を観察する私は、たとえ演奏を身近で聞いていたとしても、殆ど楽しんでいないのだと錯覚した。演奏していても、全く同じ気持ちだった。即興をしても、何か機械的な音がした。正直何の為に音楽をやっているのだろう、とさえ感じた。気づけば、真剣に向き合えば向き合うほど、自分の表現したい事ができなくなるジレンマにハマっていた。だから一度、音楽との向き合い方を変えようと決心した。他人の表現を観察するのをやめて、体で感じられるように、心から楽しんでみるようにした。頭で考えるのをやめた。そうすると、次第に、自分の一番表現したい内容が出てくるようになってきた。周りの演奏を聞いていても、ジャズはやはり美しい音楽であると、感性を刺激された。そして気づけば、セッションやライブで上記の二種類の人間が垣間見えてきた。だが、私の頭の中には疑問が残る。真剣になることの何が悪いのだろうか、と。

 

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2015年の一月頃、私は地元の映画館でWhiplash(邦題:セッション)という映画を見て、感銘を受けた。プロタゴニストの、偉大なジャズドラマーを目指すアンドリュー・ネイマンは、ニューヨークのシャファー音楽院に通う大学一年生だ。彼はそこでジャズ・アンサンブルを指揮するテレンス・フレッチャーに才能を見出される。しかしフレッチャーは生徒に暴力的と言えるほど厳しく(生徒の顔を引っ叩いたり、椅子を投げつけるシーンもある)アンドリューも次第に彼の影響下に置かれることになる。

私がこの映画で特段感動した点は、努力とそれに伴う犠牲 の表現が美しいところだった。つまり、どれだけフレッチャーから叱られても、理不尽な暴力を受けても、偉大なジャズドラマーになるという、成長を第一目的として捉えているアンドリュー・ネイマンがどこかハードボイルド的で、そしてマスキュラーなエッセンスが詰まった彼とフレッチャーの関係が魅力的だった。しかし、実際のところ、極端な献身的行動が、ジャズの即興に於いて、表現の自由や可能性を捻出することができるかどうかには、疑念が残る。私が思うに、極端な献身性からくる真剣さが、寧ろ表現の自由を妨げると考える。なぜなら、身体がどれだけリラックスされた状態であっても、心が、上達するという一種の目的に固執してしまい、自己表現を優先するよりも、パフォーマンスとしての上手さをより意識してしまうからだ。音楽においてテクニカルな面は、根本的に表現のバリエーションを広げる一つの手段にほかならない。そして究極的には、物事に対する真剣性が人間の内部に潜在するエゴによって拡張され、上達するという手段が目的と化してしまうという危険性がある。アンドリューはフレッチャーの圧力と共に、精神を押されながら偉大なジャズドラマーを目指したけど、それが一人の表現者=音楽家として、成功したと言えるだろうか?

 

*** 

 

今夜もジャズのライブが始まる。一人のギタリストがヘッドを演奏し始めるや否や、観客席の一番前に座る一人の若いドラマーが、険しい表情で、演奏しているドラマーだけを見つめていた。

 

Steve

【ウッドベース】ラベラ・ブラックナイロン弦7710Nのレビュー / A Product Review: LaBella Upright Bass Strings 7710N

こんにちは。先日、遂にずっと欲しかったモノを手に入れました。

sethproton.hatenablog.com

前回の記事で、散々ブラックナイロン弦の素晴らしさについて語りましたが、結論から言うと、実際に弾いてみてもほんとうに素晴らしい弦でした。ということで、今回はラベラのブラックナイロン弦についてのレビューをしたいと思います。

まずは、アマゾンで$169.99で販売していたので、そこからオーダーをしました。弦の中ではラベラとオブリガード、正直どちらも欲しかったので迷いましたが、最終的には、お手頃な価格という事と、面白いサウンドに期待して、ラベラを選びました。

f:id:sethproton:20170810134135p:plainそして待つこと2日後、ついに届きました。
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 開封していきます。
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赤の装飾が美しいです。
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古い弦を外して、一本ずつ交換していきます。

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なんとなくピエゾでチューニングをしました。 
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こんな感じの見た目になりました。見た目が随分と落ち着いたので、気に入っています。

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プレイアビリティ・サウンドについて

実際に演奏してみて、驚いた事が沢山あります。それは私が、こっちのフォーラムで見て知った内容とは異なる感覚を、弾いてみて体感したからです。まず、テンションについてです。レビューやフォーラムにはテンションは緩めだとの声が多かったですが、弦のテンションは少なくともミディアムです。緩くもなく、硬くもなく、弾きやすさの真ん中レベルでしょうか。もしかしたら普通より少しだけ緩い、という部類に入るかもしれません。

次にアルコ(弓)についてです。これは、他のレビューの通りですね。弾いてみると、

ギィエーーーーー!!!

って音がしました。最初はその不快な響きに、思わず、腰を抜かしてしまいました。ブライト過ぎて、心地のいい音ではありません。でも、予想外だった事の一つとして、アルコで弾けない事はないということです。レビューではナイロンに弓は不可能と述べられていましが、松脂をよく塗れば、少なくともローポジションはまぁまぁ、十分音はでます。(とてもブライトで前衛的?音ですが)私は、普通の弓しか手元に無かったので、黒毛だったらもっとしっかりした音が出せるかもしれません。しかし、問題はハイポジションです。2オクターブ上のCから途端に寒気がする音が出るのです。さらにスケールの練習で3オクターブ上のG以上からは

キァァーーーーーー!!!

という不快極まりない音を響かせてきます。(※弓使うのが上手い人なら、綺麗に弾き切れるかもしれません)しかし全体的に、アルコでスケールの練習できるレベルではあると思います。弓で練習することが今後できないと推測していた私は、これは嬉しいサプライズと言えます。話は少し飛びますが、私は普段、音楽科の防音室で練習しているのですが、さすがに防音室といえど、個室の近くでは練習している音が聞こえるので、今後この弦でアルコするのが少し恥ずかしいです。どこで練習しようか悩みどこです。

話を戻します。メイントピックであるピチカートについて。これは前情報通り、サステインが長く、ブライトであり、アタックのある音がしました。弦高を低くすれば、指板と当たって、更にアタック感の強まる、味のある音がします。(この音は好みが別れると思いますが)しかしながら、これも驚いた事の一つなのですが、生音は思った以上に落ち着いています。ベース本体の個体差で、サウンドの違いは出てくると思いますが、私が想像していたのはもっとキーンとした音だったので、意外でした。寧ろ、音全体のぼやけていた輪郭が浮き出てくれたお陰で、一つ一つの音がより聞き取りやすくなりました。(ピッチの間違えとかバレやすくなりそうです笑)サンプル音源はこちらからチェックできます↓ 生音です。

この弦を使っていて、一番嬉しい点はやはりハイポジションです。音の輪郭がくっきり浮かび上がる特徴があるので、ソロをする時に、音が綺麗にそして鮮明に聞こえます。

 

総合的にみて、ピチカートのサウンドに、私はとても満足しています。前述した通り、アルコはいまいちです。プレイアビリティは、テンションが若干緩いので弾きやすいです。あと直径は普通の弦に比べて若干太めですが、弦がツルツルしていて左手の運指が容易なのもポイントが高いです。

如何でしょうか。一長一短の特徴を持つこの黒弦。ラベラ・ブラックナイロン弦の7710Nのレビューでした。

 

Steve

 

最近の悩み: どうしたら速い曲をうまく弾けるのか /The Problem: How Can I Play the Tune with the Fast Tempo

私の最近の課題について悩んでいます。

セッションの多数に渡る参加で、得たモノが2つあります。一つ目はメンタルです。沢山の人間に囲まれて、ソロをしても全く動じなくなりました。これのおかげで、大学の授業で長時間プレゼンをしても、緊張することがなくなりました。これが場数を踏むということなのでしょうか。メンタルの補強としては、私のジャズの教授が薦めてくれた、The Inner Game of Tennis (邦題:インナーゲーム)という本を読みました。テニスの本なのですが、多くのジャズミュージシャンに愛読された本だそうです。この本の内容については別の機会に書きたいと思いますが、私のメンタルを補強してくれた読み応えのある本ですので、読まれた事が無い方はオススメです。二つ目は、ウォーキングベースラインの適応性のレベルの向上です。散々ビバップを周りが演奏するので、コードトーンの理解と速いテンポについていけるウォーキングベースラインを死ぬほど鍛えられました。(※これを習得するまで周りには散々迷惑を掛けてきました笑)

しかし、二つのファンダメンタル、基盤的要素を習得しても、まだ一つだけ、ベースを演奏する人間としての、習得しなければならない大きな課題が残されています。それは速い曲に対するソロの順応性です。

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指は動くモノなのでしょうか?私は今まで見えてきたビジョンが、今は見えません。私が最初にアップテンポでベースプレイヤーがセッションでウォーキングベースラインを作っていた時は、もう有りえない!!と驚いて、口を開けて眺めているだけでした。どうしたら指がそんな速くついていけているのかと思うぐらい。でも今の自分にはそれがリラックスした状態で、できます。やれと言われれば、340bpmまではウォーキングベースラインを弾ける自身があります。そしてそれを行う為に、練習に取り組むというビジョンがありました。でもソロではどうでしょうか。有りえないぐらい速い弦のピッキング、つまり240bpmをクォーターノートで弾きこなしてソロを作るベーシストにはどうしたら成れるのか。練習だけでそこまでたどり着けるモノなのか。最近私自身を疑うことがあります。

 

答えは自分でも把握しています。それはマッスルメモリーです。これを構築するたった一つの方法は、Repetition(反復)だと知覚しています。それを得る為にはスケールや指使いの練習しかないのでしょうが、ものすごい長い道のりで、膨大な時間を自分に投資することになりそうだと予測します。速く200bpmをソロでうまく弾けるようになりたいです。それはつまり、220bpmあたりをまぁまぁ弾けるレベル、という感じですかね。あまり強調すべき主題の無い内容となってしまいましたが、最近のセッションでは、速い曲のソロを私はスキップする傾向にあるので(自分の表現ができない=ジャズの楽しさがない)はやくジャズを心から楽しめる人間になりたいです。

 

Steve

あなたはウッドベースのブラックナイロン弦が好きですか?/ Do You Like the Sound of Black Nylon Strings?

ここ2ヶ月ブログを更新していないので、ちょっと最近思うことを書いてみます。

あなたはブラックナイロン弦、というのをご存知ですか?

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(↑ そう、ロンカーターをご存知の方であれば、知っている人は多いと思われるブラックナイロン弦)

 

このブラックナイロン弦というのは、文字通り、内部のスチール材をつるつるのナイロン材でコーティングした弦のことなんですが、元はこの弦のメーカーのラベラ社(Labella)が、日本のサントリーのCMでおなじみのジャズ・ベーシスト、ロンカーターと共同開発して作られたものなんですね。ロンカーターはマイルスのバンドにいた頃、独特のサステインとドライブ感でモーダルジャズを支えたベーシストの偉人です。

そのブラックナイロン弦なのですが、特徴として、サステインの長さと明るい音があります。(※ラベラ社は”ガット”の暖かい音を売りとしているが全然そんな音はしない)そんなロンとこのブラックナイロン弦の相性は悪い筈がなく、聞いていて、ロンの音=ブラックナイロンと一発で分かる音が彼によって表現されます。他にもラベラ社と契約していて、有名なベーシストといえば、Buster Williams やMads Vindingが挙げられます。今では、ブラックナイロンはエレキ弦の選択肢としてもありますね。ラウンドよりはブライトさが抑えているが、フラットよりは断然明るい音がします。

 

で、私はこのブラックナイロン弦の独特の音がすごい好きなんですね。アンプを通さず、箱だけで鳴らすと、言葉で形容しがたいのですが、アタックのある明るい音が、耳障りなほどに響いてくれて、聞いていて楽しいです。アンプを通すとフレットレスのエレキベースに立体感をつけたような音がうまく合わさって、アンサンブルの中でもよく聞こえます。ミドルと高音の音域が良い感じに高いんでしょうね。

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演奏面に関しても、私はまだコントラバス用のブラックナイロンを試していないので、定かではありませんが、レビューによるとテンションも低いらしく、弾きやすいそうです。左手に関しても、弦がツルツルしているので、音から音へ移動するのも不可なくできるようです。ただ、唯一の欠点としてアルコ(弓)が出来ないのが欠点ですね。海外のフォーラムを見ていると、チェロ用の松脂と引っかかりの強い黒毛の弓を使えば、弾けないこともないそうな。

 

ウッドベースのブラックナイロン弦聞いたことない方↓  Mads Vinding のI Remember Clifford おすすめです。

www.youtube.com

 

如何でしょうか?ブラックナイロンはジャズのベースのダークな音をを排除してしまうので、好みが別れる音だとは思いますが、好きな方は嵌り、嫌いな方はとことん嫌いそう。

でも、ベースの位置づけが時代と共に変わって、ジャコのようにブライト&メローな音を出すために、ラウンドを選択する人もいますから、バンド内でアクティブな役割を持つベーシストにとって、今のジャズシーンを切り開く革新的な音になりそう?

 

Steve

 

↓ついに買いました!ウッドベースのラベラ、ブラックナイロン弦のレビューです。

sethproton.hatenablog.com

ウッドベースと弦のテンション、弦高と演奏者の体格の関係について

 

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ウッドベースコントラバス関連の日本語のサイトが少ないこと少ないこと。英語で検索してもYoutubeを見ても話題に出している人はかなり少数。

 

ウッドベースの弦のテンションや弦高について最近悩んでる。というか、始めた時からずっと悩んでる。クラッシックのオーケストラをやってれば、弓でさらにローポジションを多様するからそこまで弦高やテンションに拘るという人はいないのかもれしないけど、ジャズのウッドベースの基本原則は、弦高高めで駒の近くを弾くことが良しとされているのだけど、それがどうもうまくできない。

 

まずとにかく弦高が高くては演奏がしずらい。とくにハイポジションやA弦、E弦。

ふと自分のウッドベースの弦高が低くて、フレットバズも少しあるし、鳴りが悪いかな?なんて思って近所のバイオリン屋に行って駒の高さを直してもらったら、弦高と何故かテンションが逆に高くなってしまって、A弦でリズムが全く取れない状態になった。要するに自分の指が弦のテンションの強さと弦高に耐えられなくなった。

 

その弦高高い状態+高テンションで何日間練習してたんだけど、どう考えても改善される兆しが見えない。

 

結局、駒の高さとテンションを直そうと、ググって調べてみたらこんな記事があったので、参考にした。ありがとうごさいます。

imasashi.net

 

要するに駒を指板から離すと物理的にテンションがゆるくなるという事をこの記事では語っていて、なるほどなぁーと思って私も試してみたら、結果弦のテンションは下がっていい感じに。

 

弦高と演奏者の体格の関係について

 

で、弦高についてなんだけど、前述した通りジャズには、ひとつマスキュラリティーな定説というのが蔓延してる。それは弦高が高ければ高いだけ音がよく響いて、良いみたいな。確かに、一つのウッドベースの特徴として、少しでも弦高をあげると、顕著に音が増幅されるのが分かる。ということを考えると、昔のベーシストなんかはアンプやマイクの発達していない時代にドラムやサックスにかき消されないようにボンボン鳴らしてたわけだから、かなり弦高は高いと言えるのではないだろうか。例えば、デュークエリントンのビックバンドに所属していたジミーブラントンや、マイルスのバンドにいたポールチェンバ−スなど、とてもアクースティックで芯のあるサウンドが特徴的なんだけど、彼らの、他の楽器に負けないビックサウンドってやっぱり彼ら自身が文字通り巨人だったからではないだろうか。だから、彼らの巨大な手から繰り出されるピッキングは、弦高のめちゃ高い駒付近をピッキングしても問題なかったのないだろうと推測される。

 

偉大なジャズベーシストの一人であるジョン・パティトゥッチはあるセミナーでこう語っている。

www.youtube.com

 

42:54〜

僕が周りの指が長いベーシストたちを見た時は、僕は一生良いベーシストになれないと思ったよ。自分の指は長くないからね。僕の最初にレッスンを受けたクラッシックのコントラバス奏者チャールズの指はデカいソーセージのような指を持っていたんだ。

43:16〜

でも一番大事なことは、右腕に絶対力を入れてはいけないことだ。もしあなたが(弦高に苦戦しながら)力を込めて弾いているならそれは良くないサインだね。弦高が高くなくても大きいサウンドは手にいれることができる。ミルト・ヒントンやレイ・ブラウンロン・カーターも弦高は普通だったけど、彼らのサウンドは美しいよ。

 

高身長のロン・カーターが弦高低いのにはちょっと意外だったけど、ジョンのこの話は説得力ある。ジョンは他にも、弦高をあげれば上げるほど、音が増幅するというのではなく限界点があるというのも指摘していた。

 

要するに自分の体格にあった弦高とテンションを見つけるのが一番良いというのが結論。私の体格はジャズベース巨人のような体格ではないので、ローアクションで自分のサウンドを追求していきたい。

 

Steve

ウッドベースをはじめて半年が経過した。

ウッドベースをはじめて半年が経過した。

去年の12月末ぐらいから大学で保管されているベニヤ板のコントラバスを、一学期$35という破格のレンタル料に感動しつつ、生まれてはじめてクラッシックの弦楽器に触れる機会を手にした。ところがそのベースは超安物で全く音がしないものだったから、速攻、近所のバイオリン店でマシなやつをレンタルする。(その安物のおかげで早い段階から右手と右腕の使い方で正しい音の鳴らし方というのに気付けた)

 

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この半年を振り返ると色々なことをやった。

ビバップの定番チューンでもあるDonna Leeのメロディーを200bpmのテンポでやったり↓

www.youtube.com

ひたすらポールチェンバースの曲をコピったり↓

www.youtube.com

左手の運指も、まだ力入っているが多少見れる範囲にはなってきた。自分ができる範囲でテクニカルな方面にも焦点当てたりして、建設的な練習ができていると思っていた。(だけだった)

 

そう、思っていただけだったのである。

 

先日、鼻高々、自信満々でジャムセッションに飛び入り参加したら、ビバップの自分の知らない曲を200以上のbpmを演奏する羽目になり、演奏中、右手左手が攣りそうになって死ぬ思いをした。演奏中はこの悪夢はいつまで続くのか等といったことを考えていた。

 

そう、この半年間、ウォーキングベースラインまっーたく練習してなかったのである。

思えば、一年前にエレクトリックベースをはじめて、ウォーキングベースラインもエレキで練習し始めて、最低限はそこそこできるようになった。

でもなぜか、エレキ→アップライトに変えてからは全く歩行ベース線をサボりベースソロの研究ばっかしてた。これでもかというぐらいチェンバースのソロの研究をしていた。(チェンバースのソロについては後日、別の記事で書きたい。)ハナっから他人を支える気0ベースマンが完成されていた。しかしチェンバースのソロは魅力的すぎるから、この点についてはチェンバース本人も批判されて然るべきだ。

 

このサイドマンを放棄したサイドマンを、ジャズドラマーで例えるとすると、リズムやスィングを磨く練習そっちのけで、自分のソロだけを半年間ずっとドラムをひたすら叩きまくって練習してるという異様な光景に言い換えられる。

 

自分がベース奏者としてソロ楽器を支えるということをすーっかり忘れていた点は、出しゃばりな性格があるからか。現実は観客が焦点を当てるのは花形楽器、又は、聞いてもウォーキングベースラインが殆どであって、ベースソロなんていうのは一般的にニッチなものに分類される上、曲1つで見た時、全体の10%にも満たない長さである。こういった現実をベーシスト・インフェリオリティか、それともベーシスト・アイデンティティとして捉えるのかは自由だが、ジャズにおいてバンドを下から支える低音の役割がめちゃくちゃ重要だという事実は揺るがない。

 

でもここまでウォーキングベースラインを練習する大切さを軽視したのには、やはりエレキベースという楽器を最初に始めたからだと感じる。エレキベースでやるウォーキングベースラインはウッドベースと比べると難しくない。というか、エレキベースという楽器自体、4弦でとっつきやすいモノだし、普通のギターに比べれば、単純明快な楽器だ。

 

そんなノリでウッドベースを手に取ってみたが、まぁエレキと違って体力を消耗するオンパレードだ。前述の通り、ジャズクラブのセッションなんかで、知らない曲+200bpm以上のテンポという悪夢のコンボを出された日には、コードを目で追ってついていくだけで精一杯だったから、自分のソロの時にはHPが1ぐらいしか残らず、ヨボヨボの年寄りとも似つかない左手の運指でソロを実行することが殆どだった。

 

ということで、今日から練習を360度、720度方向転換する。ソロ分析は全部やめて歩行ベース線にシフトする。400bpmのテンポの曲を初見でも変顔作りながら、周りの音をしっかり聞けるようになることを目標にしたい。

 

Steve

 

 

ベースギターの苦手な指板のポジション? / The Uncomfortable Position on Fretboard?

先日、興味深い記事をJazz Guitar Blog さんのブログから拝見させて頂きました。

jazzguitarspot.com

記事の内容は指板上に存在するバミューダトライアングル、つまりギタリストが苦手とする指板上のポジションをコミカルに表現した内容でした。ユーモアがあって面白いです。

しかし指板の苦手なポジションはバミューダトライアングルであれ何であれ、存在するのは事実です。それは私も苦手としていたポジションで8フレットから12フレットの間になります。

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↑位置で言うとここら辺です。

どうやら共通意識としてこの8ー12フレットのポジションで弾くのが0−5フレットのポジションよりも自信がない人が多いようです。でもそれって何故なのでしょうか?

その理由とそれを克服する対策を今回は考えてみました。

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理由1:インレイの視覚的弊害

ベースギターにはインレイというポジションマークが付いています。私たちがベースギターを始めて手にする時に3フレット3弦のドという音(C)を人差し指で抑えて薬指か小指をレの音(D)で抑えるという形、つまり、ドをルート音にスケールや音の構成を構築していくケースが多いのではないでしょうか。そしてそのドの音やレ、上にあがって4度のファ(F)やソ(G)にはインレイ付いています。さらにルート音をドとして捉えてインレイを目で追っていくやり方で、メジャースケールやマイナースケールを、開放弦を使用せずに、左手のストレッチを極力しない弾き方で、3−7フレットの中で弾くとします。すると、例外なく、一度、2度、4度、5度の時にインレイを抑えます。この人差し指と小指または薬指にインレイがあるという視覚的感覚に加えて、半音(Db, Eb, F#,Ab, Bb)にはインレイがないと認識する感覚が初期の段階で身についてしまったから、これが弊害になっているのではと考察できます。8フレットから12フレットの間には前述のド(C)やレ(D)にインレイは存在しません。半音階のド#(C#/Db) やファ#(F#/Gb) 等にインレイが配置されています。

 

 12フレット以降のインレイの配置は、0−5フレットの配置と全く同じです。だから12フレット以降の指板のポジショニングは迷いにくいのでしょうね。

 

理由2:使用する頻度が他のポジションと比べて少ないから

ルート音でバンド内を支えることは、ベースギターの役割の一つです。その点を踏まえると、高音より低音に素早くアクセスできるポジションが使われやすいと推測できます。従って8ー12フレットを使用するよりも、低音にアクセスしやすい3−5フレットを使用する頻度が高いと言えます。例えば同じド(C)でも8フレットのド(C)より3フレットのド(C)の方が使用する頻度は高い筈です。ジャズのウォーキングベースラインを構築する上でも3フレットの上に存在するド(C)は頻繁に使います。さらに前述した通り、インレイも3フレットのド(C)にはありますから、それに慣れて気楽に使える、という人が多いと思われます。

 

理由3:8ー12フレットの音は3−5に比べて音色が違うから

同じド(C)でも3フレットの方が8フレットのド(C)よりサスティン(音の伸び)があります。8−12フレットにある音は1弦を除けば、0−5フレット内で全て出す事ができます。こういった互換性がある中で、音色という点で8−12フレットの音が0−5フレットの音に劣るから使用する頻度が少ないのではと推測できます。実際の例としては、ベーシストの行うスラップで8フレットあたりを弾いても、0−5フレットと比べると、弦のテンションが違うので全く気持ちよくない事が分かります。こうした理由から使用する頻度が少なくなるのではと考察できます。

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まとめると、インレイの視覚的弊害や、音色の選択、これらが8−12フレットを使用する頻度を低下させ、この間の指板上の押弦の自信を低下させているのだと思います。

 

8−12フレットはジャズのソロでは最も重要なポジション

ジャズのソロではアルペジオ主体のフレーズをソロの時に多用します。8−12フレットあたりのポジションは4弦のベースギターがポテンシャルを一番発揮できるポジションです。なぜかというとCのキーのダイアトニックのアルペジオを左手のシフティングをほぼ無しで演奏できるからです。詳しくはこの動画の10秒あたりを参考にしてみてください。

youtu.be

どうすればこの8−12フレットの苦手なポジションを克服できるのか

 結論としては、考えながら練習することだと思います。私の体験談からですが、ジャズを始める前には指板上の1フレットの一弦にあるラ(Ab)や2弦上のミ(Eb)を覚えるのに何故か苦労しました。どちらも半音だから頭に入りにくかったのでしょうか。そしてコントラバスを始めてからは、指板上のハーフポジションを嫌でも練習しないといけなくなります。ちなみにハーフポジションというのは人差し指から小指がそれぞれ、1フレット、3フレットにあることを指します。コントラバスでは弦が太いので押弦する時に、エレクトリックベースよりも一般的に体力を使います。なるべくその負担をなくすためにハーフポジションで開放弦 (E,A,D,G)を駆使してウォーキングベースを作るので、このハーフポジションは重宝します。練習しだしてから、一弦にあるラ(Ab)や2弦上のミ(Eb)は完璧に頭に入りました。この頭に入るというのは無意識に指が動くことで、どこにその音があるのかを記憶することではありません。そしてその無意識に出したい音を出せる状態に、私たちの脳を持っていくには、音と音の関係性をインレイを使わない体感で覚えること&自分に制限を加えることの二つが大事だと思います。

 

単純に8−12フレットの間を普段使っているスケール移動するだけではあまり効果的ではありません。(勿論やる価値は絶対ありますが)一番の近道は音と音の関連性をインレイに頼らずマッスルメモリーで見つけることです。その関連性を見つける例では10フレット、4弦のレ(D)を人差し指ではなく、小指で押弦してそこからメジャースケールやマイナースケールを練習したり、普段から行っているいつものスケールの左手のシェイプではなく、新しいシェイプやスケールパターンで音の関連性を探索してみることです。

もう一つの自分に制限を加えるというのは、8−12フレット間の音と3−5フレット間の音には互換性があるので、敢えて、3−5フレットを絶対使用せずに8−12フレットだけで音を出す!と意識して練習すれば、この指板を克服できるでしょう。

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似たような記事も前書きました↓ 気になった方はぜひ。

sethproton.hatenablog.com

 

Steve