Jazz Bass Blog

Exploring The World of Jazz and Low Note

音楽科について思うこと/Thought about School of Music

 



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私は今季、ジャズのクラスとラテンアンサンブルのクラスを取っている。音楽科でもない私がこれらのクラスを取ることは新鮮で、学ぶことが非常に多い。それはまるで異国の地に辿り着いたような感覚で、音楽科の建物に最初に入った時は、その変わった雰囲気から、初めてアメリカに来たことを思い出した。クラスを取る前はどうしてもジャズがやりたくて、学期が始まる前にアドバイザーに相談していたのだけど、どうやら、ジャズのクラスは3つしかないようで、そのうち2つがオーディションを必要とするジャズコンボとアンサンブルのクラス。残る一つはJazz Theory と言って所謂ジャズに関するアカデミックな音楽を学ぶのだけど、もちろん音楽科の大学生が対象だから、このクラスを取るには二つの必修科目(music theory とか)か教授の承認が無いと取れないようになっていた。私はどうしてもこのクラスを取りたかったので、アドバイザーには止められたけど、教授に取れるようにお願いしてもらって、そして今、このクラスで苦戦している。テストの点数が思うように伸びないのだ。

あの時散々アドバイザーに取るな、と言われた理由がわかった気がした。それはこのクラスがその名の通り、音楽科の三年生以上にオファーしているクラスだからだ。しかしながら、このクラスは私自身の価値にも気づかせてくれたクラスだ。

絶対音感/完全音感というのをご存知だろうか?

絶対音感(ぜったいおんかん、英語:perfect pitch)は、ある音(純音および楽音)を単独に聞いたときに、その音の高さ(音高)を記憶に基づいて絶対的に認識する能力である。狭義には、音高感と音名との対応付けが強く、ある楽音を聞いたときに即座に音名・階名表記を使用して表現できる能力である。

絶対音感 - Wikipedia

言葉通り、何も見ずに音階を識別できることだが、私にはそれがあった。どうやら幼い頃、ピアノを習っていたのが今になって役に立ったのだ。ただ、議論はある。絶対音感を先天的能力だとか後天的でも身につくだとか。今回はこのことについては詳しく触れないが私は後天的、つまり絶対音感は幼少期からのトレーニングによって発達するものだと信じている。

さて、この能力が私の今のクラスにどれだけ貢献しているかは、計り知れない。ただ、間違えないでほしい。私はこの能力を自慢しているのではないし、まるで自分を特別な人間だと思ってもいない。寧ろ私が特別だと思うのは、”彼ら”だ。彼らはすごい。一体どれだけの努力をしているのか私には想像もつくはずもなくー彼らのスキルは長期に渡る鍛錬から得られたものだろう。彼らのすごさは私が重い腰を下ろしてブログに書こう、と思わせるほどすごい。

それで、彼らの凄さの例なのだけど、Jazz Theory のクラスで教授がピアノで複数のコード MA 7th, Minor 7th, Dominant 7th, Suspension, Diminish (full dim or half dim), Augumented, MA6th, Minor 6th の中からランダムに選んで和音で演奏して、生徒が聞き分け、コードの名前を紙に書くテストがある。絶対音感を持つ私は個別の音を識別してから、コードを識別する。例えばC MA 7th であれば、CEGB) だから→C MA7th となる。対して音楽科の生徒はそのコードのトーンで識別する。(だから彼らがMajor 7th を聞いたと思ったら、X MA 7thと書く。)  完全に識別するプロセスが違うと感じ、驚いた。彼らはどうやって全体からコードトーンを識別することができるのか?絶対音感を持っていないから、コード一つ一つのトーンは識別できないはずなのに。それはまるで、リンゴを識別する時に、私は色が赤いと知覚したのでリンゴだと判断するのに対して、彼らは形を見てリンゴであると理解する。私は特別な努力をしていないので、そのリンゴの形が見えないが彼らには見える。しかし彼らはリンゴの色をうまく識別することはできないのだ。でもリンゴだとわかる。非常に不思議な話だ。

しかしながら、彼らがそれらの努力をしてきているのもわかる。彼らが単に音楽に対する情熱があるというのもあるが、キャリアの問題もある。偉大なる成功者は大抵大学の卒業式にゲストの演説者として呼ばれた時なんかは、「俺はこれが好きだから今成功したんだ!」なんていうエンスージアストが多い。彼らは賞賛を与えられるにふさわしい人間である一方で、好きというファクターをモチベーションにして成功する人間は一握りだというのも事実だ。私が経済学をメジャーにしているのも、最初は就活がしやすそうという漠然とした理由からだったが、リスクを考慮すればそれは悪い選択肢と言えなくもなかった。しかし音楽科でDegreeをとるならば、職を手にし、成功するという限定的な条件下ではリスクは高いように思えるのだ。だから彼らが自分の能力を少しでも伸ばし、他人と違いをつけるために必死になっているのもわかる。私にはその覚悟がなかった。好きだからといって、それを選択してうまくいくほど社会は簡単な構造で成り立っていないと思う観念が頭にあった。

 

もう一つ、最近、深い言葉を教授から聞いた。私が教授に質問した時だった。「例えば、自分がimprovisationしていて、Dominant 7thのコードを見つけたら、Altered Scaleを使おうとか、頭の中で常に考えているのですか?」と。

彼は言った。"When great players do improvisation, they think really hard to not think" (偉大なミュージシャンが即興する時、彼らは考えないようにするために考える)

偉大なミュージシャンたちは、即興する時もはや考えもしないだろうから、教授が自身に当てはめて言ったのだけど、奥が深すぎる。

 

結局、ジャズというのは一体なんだろう。クラスが終わり、音楽科の建物を出るときにいつも思うことだ。子供の頃聞いた時は、こんなの皆適当に演奏してるだけじゃん!って思っていたけど、今はそのジャンルの複雑さが、音楽理論によって少しづつ紐解かれていく感じがする。それを完全に理解できるまでは、まだまだ先の話になりそうだ。